第二説(出水説)

名所考に曰く、「宮寺郷と云ふ所に不老川あり。 畑の方より湧いて川となり、夏の大雨にて出水の節は怪我人等あり。 毎年大晦日に至て水流るゝとなし」と。 旧蹟考は曰く、武蔵野地名考に言ふ。 「或人霖雨の頃武厳野を行くに野路の外なる処は水湛えて通ひ難し。 野中を行けば何処とも無く水流れて、草根沼の如し。 此頃往復の人定ならず。 道を此処彼処とさまよひ、水無き方に渡す。 武蔵野の人皆知れる所にして、八九月頃霖雨に偶ひては必ずあるとなり。 これなん迯水の迯かくれても云々と符合するとにや。 又一説に不老川は年末に水絶ゆる故迯水なりと云へど、こは迯水にあらず、渇水なり」。 と。 要するに以上を出水説と名けん。