堀兼井は古来頗る人目を惹き、武蔵野を語るものは迯水と共に直に堀兼井を連想す。 古歌頗る多し。
武蔵野の堀兼の井もあるものをうれしく水の近きにけり
浅からす思へはこそはほのめかせ 堀兼の井のつゝましき身を
くみてしる人もあらなん自つから 堀兼の井のそこのこゝろを
いまはわれ浅き心をわすれみす いつ堀兼の井筒なるらん
堀兼ぬる水とのみきく武蔵野の 身はさみたれの波の下くさ
武蔵野や堀兼の井の深くのみ 茂りそまさる四方の夏草
いかてかく思ふ心は堀兼の 井よりもなほそ深さまされる
武蔵野の堀兼の井の底澄み 思ふ心を何に例へん
おもかけのかたるに残る武蔵野や 堀兼の井に水はなけれと
等種々あり。