此村古は鎌倉街道の要衝に当り、開創己に久しく、古戦場也。久米村久米川の名、既に史上に嘖々たり。古社寺も存す。遊子此村を訪ふて、雑木林の中に古墳を探り、麦畝の間廃寺を眺め、山上の松籟をきゝ、地下の渓流をきゝ、感慨特に切なるものあり。若し夫れ春花、秋月は固より、初夏の新緑、晩秋の紅葉等の好期節、杖を鳩峯八幡の境内より、荒幡新富士地方に曳くとせんか、天然の勝景、塵外の余趣あるを知らん。宜なる哉、東都の文士、大町桂月荒幡富士を推賞せると既に久しきや。