新堀にあり。吾庵山金剛乗院放光寺と云ふ。一般には山口観音として人口に膾炙す。堂の側に古雅なる推鐘を掲げたり。元弘三年五月十五日新田義貞の祈願書と称するものを蔵す、果して然るや否や。天文中泉梅なるもの、盛に塔堂を設け、為に寺封開山と称せらる。今の本堂は宝暦十二年三月の建立也。本堂 書院 方丈 庫裡 開山堂 鐘楼 仁王門 等相並び、境内広濶にして高雅、自然の風致あり。寺観壮大にして静浄、人為の趣を添えたり。殊に堂の後方山巓へ登れば山口村の渓谷を眼下に指点すべし。蓋し郡内南部に於ける遊覧地の巨壁也。