小手指の名称に就ては未だ其の由来を明にせず。或は曰く、日本武尊此地に来り、小手をかざして前方を眺め給へるにより名くと。或は曰く武器より生ずと。或は曰く、小手指ヶ原とは原野の名にあらずして、原野に生ずる荊棘の名にて鄙言の転染せるなり。(中略)葉は長春と云ふものゝ如く、花は白く長春の如くにもあらず。小なる棘針(とげはり)多く、農民等草刈するもの、其手足を剌され、取除け難し。殊に此荊一面に蔓延し、余の草を茂らしめず。名けて小手刺荊棘(こてさんばら)と云へり。昔は此辺入間野にして、広漠たり。此草茂りしにより小手指原の名を生じたるなるべしと。何れも従ふ能はず。