東沢と称する処にあり。木蓮寺瑞泉院末、開山本室文禄元年六月寂、開基豊泉左近将監にして天正三年九月卒す。左近の祖は小田原に仕へ、後浪人となりしが、左近此地を開き、此寺を立てたり。法名豊泉院名山大誉居士と云ふ。寺は山に挟まれ、渓間の要地に居り、寺域頗る広く、財宝甚だ富裕なりしも、漸く衰へ、且火災の難あり。今は一本堂及一庫裡を存するのみ。豊泉氏今尚存す。