笹井

笹井は、村の西部を占めたり。村の中央に清水湧出する井あり。村民之を愛せしかば村名となると伝ふ。その泉尚存す。

白髭神社

村の中央にあり。社務所は青年の会場にして且撃剣場たり。末社に愛宕明神、鹿島社あり。境内稍々広し。

宗源寺

曹洞宗総持寺末、今井山と号す。往古は宗源庵と呼べる草庵也。弘法大師作地蔵尊あり。文禄元年入間郡龍ヶ谷龍穏寺十六世鶴峯萱居す。当時徳川家臣土屋治郎左衛門昌吉の堂閣を興造する処也。其釜今尚存す。寛永二年仏工篠田佐兵衛尉定政、歯仏釈迦を負ひ来り、四世頽世の望にりり寄付し、之を本尊とす。

薬王寺

薬師堂

観音堂

古来有名なる笹井観音堂は明治の初一たび廃滅に帰せしが、近時再び其跡に小堂を建てたり。旧観音堂別当瀧音山泊山寺梅の坊は本山派修験にして聖護院末、所謂日本二十八先達の一也。廻国雑記に、佐西の観音寺といへる山伏の坊に至りて、四五日遊覧し侍る間に、瓦礫ども詠し侍る中に

南帰北去一李闌 露宿風?(そん)綱不安 贏得行乗?(くちへんにかね)詩景 干峯万壑雪団々

と。又其東北に新田義貞の陣地と称するものあり。或は当時一派の部隊が宿営せしにや。寺は大同二年の創立と称し、北条氏照の文書其外大刀鎗宗旨関係の文書を存す。堂を廃して帰農し、明治二十二年、火災に罹りしも尚此を失はざりしは幸と云ふべし。