現状

飯能町は郡の西南部に位し、北は東吾野高麗二村、東は精明村、南は加治南高麗二村、西は原市場村に接続す。其地東西に長く、南北に短し。川越町を去る五里、入間川町を去る二里半也。秩父街道(吾野道及名栗道の二あり)の要地に居り、南に青梅街道、東に豊岡、入間街道、北に越生街道あり。馬車鉄道は入間川町に至る。地勢南北に丘陵多く名栗川中央を貫流せり。東部は稍々平にして、市街は此処にあり。多峯主(とうのす)山は郡内高山の中にありて二三位に居る。天賢山(元羅漢山)、龍涯山等名あり。風景佳也。

樋織及養蚕等の業盛にして、生絹、七子、生糸等の産あり。市街は付近数村乃至秩父地方の交易地として繁昌せり、警察署、郵便局、区裁判所出張所等あり。飯能中山久須美小瀬戸大河原小岩井永田の七大字に分れ、人口七千六百八、戸数一千三百三十。